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AI業界、ぜんぶでいくら? 871の事業に値札を付けてみた

チップ、モデルのラボ、AIコーディング、法務AI……。LLMとそのまわりのAI事業871件に推定の値札を付けて合計すると、約15.2兆ドル。その半分は計算基盤でした。ピラミッド、ランキング、売上倍率、数え方で合計が倍近く変わる話まで、クイズとスライダーで触りながら見ていきます。

文・ニコ

2026年10月26日時点の推定
$15.2兆ドル

LLMと、そのまわりのAI事業 871件 の推定時価総額を合計した数字

チップを作る会社、モデルを作るラボ、AIでコードを書くツール、法律事務所向けのAI……。「LLM事業」と一口に言っても、中身はバラバラです。

そこで、ぜんぶ並べて値札を付けてみました。上場企業は時価総額、非上場は直近の評価額。大企業の中のAI事業は「切り出したらいくらか」を推定しています。

単位はぜんぶ米ドル。$1B=10億ドル、$1T=1兆ドル($1,000B)です。グラフはタップするか、カーソルを合わせると詳細が出ます。

Q. いちばん値段が高い「LLM事業」はどれ?

当たり! 惜しい! 正解はNVIDIA。LLM向けの分だけで推定 $3,500B。2位のAnthropic($1,500B)の2倍以上です。

ゴールドラッシュで一番もうかったのはツルハシ屋、という話を聞いたことがあるかも。AIでも、いまいちばん値段が付いているのは「掘る道具」を作る側です。

ものさしを替えてみる

兆ドルと言われても、ピンと来ませんよね。この表の中の数字どうしで比べてみます。

NVIDIAのLLM向けの分だけで、Tesla全体の2倍以上

NVIDIA(LLM分)$3.5T
Tesla 全体(10/25)$1.47T

Teslaは合計に入れていない参考値です。

AnthropicとOpenAIの2社で、アプリ層5分類ぜんぶの2倍以上

Anthropic+OpenAI$2.7T
アプリ層 440件の合計$1.25T

Claude Codeひとつで、AIコーディング28件の合計くらい

Claude Code(参考値)$50〜150B
AIコーディング 28件$152B

Claude Codeは$50〜150Bの参考値。Anthropicの中に含まれるので、合計には足していません。

Cursor 1社で、導入支援(SI)43件の合計を超える

Cursor$60B
導入支援(SI) 43件$46B

AI経済は、土台がいちばん重いピラミッド

871件を9つの分類に分けて、下から積み上げてみました。土台の計算基盤(チップ・メモリ・GPUクラウドなど)だけで全体の約半分。上の階に行くほど、どんどん細くなります。

計算基盤 基盤モデル開発 ビッグテックのLLM事業 残り6分類
計算基盤$7.65T ・ 192件
基盤モデル開発$3.41T ・ 73件
ビッグテックのLLM事業$2.24T ・ 32件
データ・LLMOps・エージェント基盤$621B ・ 134件
マルチモーダル・音声・ロボット$446B ・ 118件
業界・業務特化AI$429B ・ 203件
消費者向け・検索・生産性$176B ・ 48件
AIコーディング$152B ・ 28件
導入支援(SI)$46B ・ 43件
アプリ層(5分類)計 約$1.25T ・ 440件
↑ 上ほど、ユーザーに近い

いちばん上のアプリ層(5分類)は、ぜんぶ足しても約$1.25T。土台の6分の1くらいです。数は多いけど、1社あたりはまだ小さい。ここが伸びしろでもあります。

値段ランキング トップ10

バーが推定値、うすい線が「このくらいかも」の幅です。

計算基盤 基盤モデル開発 ビッグテック その他
1NVIDIA(LLM分)
3,500
2Anthropic
1,500
3OpenAI
1,200
4Alphabet(AI事業)
782
5Broadcom(AI半導体分)
739
6TSMC(AI分)
650
7Microsoft(AI事業)
466
8Micron(AIメモリ分)
347
9SK hynix(AIメモリ分)
315
10AMD(LLM分)
256
0$1,000B$2,000B$3,000B$4,000B
11〜50位も見る閉じる

11〜50位

目盛りを拡大しています(最大$400B)。上のトップ10とは縮尺が違います。

11Amazon(AWS AI・Alexa+)
235
12xAI
231
13Databricks
215
14Meta(AI事業)
200
15Palantir(AIP)
199
16Oracle(OCI AI)
112
17Marvell(AI分)
110
18DeepSeek
90
19Cambricon
87.8
20CXMT(メモリ)※
86.9
21Alibaba(Qwen・AI Cloud)
65.7
22Cursor
60
23Dell(AIサーバー)
60
24Arista(AIネットワーク)
54.3
25Moonshot AI(Kimi)
50
26Cognition(Devin・Windsurf)
48
27Intel(AI分)
45
28Arm(AIデータセンター分)
45
29Unitree(ロボット)
42.6
30ByteDance(Doubao・Seed)
42
31Canva
42
32Prometheus
41
33Figure AI
39
34Astera Labs※
37.9
35Seagate※
37.8
36Lumentum(AI光接続)
37.7
37Western Digital※
37.5
38Safe Superintelligence
32
39Crusoe
31
40Enflame
30.3
41Apple(Apple Intelligence)
30
42Tencent(Hunyuan)
30
43VAST Data
30
44MediaTek(端末内LLM)
30
45CoreWeave
29.9
46Vertiv(AI電源・冷却)
29.9
47Baidu(ERNIE)
29.6
48MetaX
29.3
49Zhipu AI
29.2
50キオクシア※
28.8
0$100B$200B$300B$400B

トップ10のうち6つが計算基盤。そして上位50のうち12件が中国の事業です(DeepSeek、Moonshot AI、Alibabaなど)。

2強ラボの値札、ほんとはいくら?

AnthropicとOpenAIは、実際に株が売り買いされた価格(成立価格)より高く見積もっています。売上の伸びと、IPOの見込みを織り込んだからです。

Anthropic

成立価格
$965B(2026年5月)
今回の推定
$1,500B

7〜9月の売上は年換算で約$67B。推定値はその約22倍。幅は$965B〜$2,000B。

OpenAI

成立価格
$852B(2026年3月)
今回の推定
$1,200B

年換算の売上推計は約$50B。推定値はその24倍。幅は$852B〜$1,280B。

2社を成立価格に戻すと、全体の合計は約$0.9T下がります。それくらい、この2社の見積もりは合計を動かします。08章で、実際にスイッチを押して確かめられます。

売上の何倍で値段が付いてる?

会社の値段は「売上の何倍か」で考えることが多いです。倍率が高いほど、市場が将来の伸びに賭けているということ。まずは予想から。

Q. 顧客対応AIのSierra。値段は売上の何倍?

当たり! 惜しい! 正解は79倍。推計ARR(1年あたりの継続収益)約$0.2Bに対して、値段は$15.8Bです。

基盤モデル開発 ビッグテック アプリ・その他
0倍
10倍
20倍
30倍
40倍
50倍
60倍
70倍
80倍
90倍
日本の上場AI銘柄 2〜5倍
Oracle(AIクラウド) 6倍
Amazon(AWS AI) 10倍
Alphabet(AI事業) 12倍
Microsoft(AI事業) 14倍
Zhipu AI 18倍
Anthropic 22倍
OpenAI 24倍
Harvey(法務AI) 39倍
Moonshot AI 50倍
Mistral 59倍
Sierra(顧客対応AI) 79倍

「売上の24倍」は、いまの売上のまま24年分の値段、と読み替えるとつかみやすくなります。

2〜5年分日本の上場AI銘柄
22〜24年分Anthropic・OpenAI
79年分Sierra

そんなに待つ人はいません。値段には「売上はこれから何倍にもなる」という期待が入っている、ということです。同じ「AI」でも、期待のかかり方がまるで違います。

分母(売上)の時点や種類は会社ごとにバラバラです。業界全体の相場ではなく、確かめられた代表例として見てください。

予想が割れる選手権

大企業の中の「AI事業だけの値段」は、会社が数字を出していないので推定の幅がとても広くなります。

Alphabet(AI事業)522〜1,173
522〜1,173
Microsoft(AI事業)237〜814
237〜814
Meta(AI事業)30〜400
30〜400
Apple(AI事業)0〜100
0〜100
MediaTek(端末内LLM)0〜60
0〜60
CXMT(メモリ)21.7〜173.7
21.7〜173.7
0$300B$600B$900B$1,200B

Metaは$30B〜$400Bで、13倍以上の開き。Appleは$0から始まります。「AIでまだ稼げていないかもしれない」というシナリオも、ちゃんと残しているからです。

上の階の主役たち

ピラミッドの上のほう、データ・LLMOpsの階と、アプリ層の5分類です。数は多いけど、ここが一番ユーザーに近いところ。各分類のトップ3を並べました。

データ・LLMOps

134件・計 約$621B
  1. Databricks$215B
  2. VAST Data$30B
  3. Scale AI$25B

マルチモーダル・ロボット

118件・計 約$446B
  1. Unitree$42.6B
  2. Prometheus$41B
  3. Figure AI$39B

業界・業務特化

203件・計 約$429B
  1. Salesforce Agentforce$21.6B
  2. Sierra(顧客対応)$15.8B
  3. Harvey(法務)$15.5B

消費者向け・検索

48件・計 約$176B
  1. Canva$42B
  2. Perplexity$28B
  3. Figma$13.1B

AIコーディング

28件・計 約$152B
  1. Cursor$60B
  2. Cognition(Devin)$48B
  3. Lovable$13.3B

導入支援(SI)

43件・計 約$46B
  1. Accenture$6.2B
  2. TCS$4.3B
  3. NTT$3.1B

Canva・Figma・Databricksなどは、AI以前からの事業も含めた会社全体の値段です。AI部分だけなら、もっと小さくなります(たとえばCanvaは試算で約$8.4B)。

日本はどこにいる?

本表には、日本の事業が52件あります。合計はいくらだと思いますか?

中身を見ると、目立つのはAIそのものよりAIを支える部品の会社です。

部品・インフラ

  1. キオクシア(SSD)$28.8B
  2. フジクラ(光配線)$11.1B
  3. 村田製作所(電源部品)$5.9B
  4. さくらインターネット$0.78B

モデル・サービス

  1. NTT(tsuzumi・生成AI事業)$3.1B
  2. Sakana AI$2.7B
  3. LayerX$1.3B
  4. Preferred Networks$1B

どこまでを「LLM事業」と数える?

実はこれで合計が倍近く変わります。スイッチを切り替えて、合計がどう動くか見てみてください。

ニュースで「AI市場は○兆ドル」と見かけたら、どこまで含めた数字かを見てみてください。それだけで、話がかみ合うようになります。

この数字、どこまで信じていい?

正直に言うと、これは値札の一覧ではなく、比べるための推定です。確かめるために、別の調査役がランダムに40件を選び、ゼロから推定し直す「抜き取り監査」を3回やりました。

件数で数えると
約81%
が、やり直しと±20%以内で一致
金額の大きさで重み付けすると
約19%
大きい会社ほど、見積もり方でズレやすい
  • 小さい会社の値段はだいたい合う。でもNVIDIAやAnthropicのような巨大な行ほど、仮定ひとつで大きく動きます。05章のAlphabetで体験したとおりです。
  • 「AI事業の比率」を会社が公表していない行は、調査側の仮定です。点の数字より、幅を見てください。
  • 大事な留保がある行は193件(約22%)。ただ金額にすると全体の約4%です。
  • Alphabet・Microsoft・Amazonなどの7〜9月期決算(10月28〜30日発表)は、まだ入っていません。

吸収された会社、消えた会社

値札を付けている間にも、会社は買われたり、消えたりします。並べてみると、AIならではの買い方が見えてきます。

会社ごと買う

いちばん分かりやすい形。
Hugging FaceNVIDIAが約$12.9Bで買収に合意完了は2027年上期の予定
World LabsAMDが$8.2Bで買収に合意2026年9月
ioOpenAIが$6.5Bで買収(Jony Iveのデバイス会社)2025年7月に完了
Fin(旧Intercom)Salesforceが約$3.6Bで買収2026年9月に完了

人と技術だけ持っていく

会社は残して、ライセンスと中心メンバーを引き取る形。AIでよく見かけます。
GroqNVIDIAが非独占ライセンスと創業者らの移籍(報道で約$20B)。本体は残り、推定$3.5B
PoolsideNVIDIAがモデル基盤を$6Bでライセンスし、約109人が移籍。本体は残っている
WindsurfGoogleが$2.4Bで創業陣を獲得し、残りの会社はCognitionが買収

退場

Character.ai(キャラクターと会話するサービス)。2024年にGoogleが$2.7Bのライセンス料を払い、創業者らはGoogleへ移りました。
$2.7B→$20M

2026年10月にChapter 11(米国の破産手続き)を申請。Disneyが一部資産に$20Mで最初の入札をしています。決着は11月末〜12月初めの見込み。

差し戻し

ManusMetaによる買収を、中国が2026年4月に撤回させた。いまは独立した会社として推定$2.5B

こういう動きがあると、数えるのが大変です。この表では、人と技術だけ持っていかれたGroqやPoolsideは、残った本体をいまの値段で載せています。買収が終わっていないHugging FaceやWorld Labsは独立の行に置き、買い手の行には同じ金額を足していません。同じお金を2回数えないためです。

あの会社はいくら?

871件ぜんぶ、ここから探せます。

「切り出し」は大企業のAI事業だけを推定した値、「全社値」は会社全体の値段です。※は、価格の時点や仮定に大事な留保がある行です。

871社をロゴの地図と全リストで見る →

舞台裏:AIエージェントで、これをどう作ったか

この871件は、aachatの中で働くAIエージェントたちが、2026年10月26日の1日で調べたものです。人間がしたのは、依頼と、途中の方向づけ(「もっと徹底的に」「現実的な上限まで一気に」)だけです。

1

10の担当に分けて、並列で調べる

西側のラボ、ビッグテック、中国・アジア、計算基盤、コーディング、日本……と10に分けて同時に調査。重複を1行にまとめて、最初の版は409件。

2

ほぼ1時間ごとのラウンドで磨く(14回)

毎ラウンド、まとめ役のエージェントが「次に何を調べるか」を決めて、調査役を最大3つ起動。ラウンド1〜14で、調査役は延べ40回動きました。

3

外の一覧と1社ずつ突き合わせる

ユニコーン企業の全件リスト3本(約5,000行)と、上場AI銘柄のリスト12本(499社)。漏れを機械的につぶしました。

4

別のエージェントに、抜き取りでやり直させる

無作為に選んだ40件を、作った本人とは別の調査役がゼロから推定し直す。これを3回。09章の81%と19%は、ここから出た数字です。

ラウンドごとの件数と合計

点にふれると、その時点の合計が出ます。ラウンド6の後は件数の記録がないので飛ばしています。

ユニコーン一覧と照合上場銘柄02505007501000R0R2R4R6R8R10R12R14最初の版 409件・合計 約$14.3Tラウンド1の後 503件・合計 約$14.8Tラウンド2の後 546件・合計 約$14.8Tラウンド3の後 595件・合計 約$15.0Tラウンド4の後 627件・合計 約$14.9Tラウンド5の後 648件・合計 約$14.9Tラウンド7の後 666件・合計 約$14.9Tラウンド8の後 666件・合計 約$14.3Tラウンド9の後 714件・合計 約$14.5Tラウンド10の後 723件・合計 約$14.5Tラウンド11の後 788件・合計 約$14.6Tラウンド12の後 788件・合計 約$14.6Tラウンド13の後 864件・合計 約$15.2Tラウンド14の後 871件・合計 約$15.2T409件・$14.3T871件・$15.2T

件数は2倍以上になったのに、合計は$14.3Tから$15.2Tへ、6%くらいしか増えていません。足した462件のほとんどは小さな会社で、合計を決めているのは上位のひと握りだからです。だから途中からは、件数を増やすより大きな行の仮定を見直すほうに力を入れました。

大きな調査をエージェントに頼むときのコツ

今回うまくいったやり方です。あなたが何かを網羅的に調べたいときにも、そのまま使えます。

  1. 分担して、並列にする。1人に全部やらせるより、領域を分けたほうが深く掘れます。
  2. 正本を書き換えるのは1人だけ。調査役は「この行をこう変えたい」という提案だけを出し、まとめ役が反映する。同時に書き換えて壊れる事故を防げます。
  3. ラウンドごとに優先順位を決める。今回は「合計を大きく動かす不確かさ → 網羅の穴 → 未確認の行」の順でした。
  4. 作った本人に採点させない。別のエージェントが無作為抽出でやり直すと、どこが弱いかが数字で分かります。
  5. 終わる条件を先に決める。今回は「新しい漏れが1ラウンド5件未満」「留保付きの行が1割未満」でした。正直に言うと、2つめは届かず(22%)。追加の調査ではもう動きにくい、と判断したところで止めています。

最初の一歩は、こんな頼み方からで十分です。

○○の分野で事業をしている会社を、できるだけ漏れなく一覧にして。
・まず領域を5つくらいに分けて、それぞれ別に調べて
・1行ごとに、数字・日付・出典URLを付けて
・推測した値は「推測」と書いて、確かめた値と分けて
・最後に、別の視点で10件だけ選び直して検算して

3行でいうと

  1. LLMと周辺AIの事業は、推定で約$15.2T。その半分は、チップやメモリなどの計算基盤。
  2. モデルを作るラボでは、Anthropic($1.5T)とOpenAI($1.2T)が飛び抜けている。
  3. アプリ層は数が多いけど1社あたりはまだ小さく、倍率は高い。つまり、期待が先に走っている。

出典:aachatの調査「LLM事業の地図と推定時価総額(2026-10-26時点)」。871件を10の担当で調べ、ラウンドごとに裏取りを重ねたもの。金額は公開資料と仮定から作った推定で、投資判断の材料ではありません。