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「有料APIなら学習されない」で許可ツール台帳を埋めていない? Claude API・Gemini APIのデータ取扱を「提供経路・課金・学習・保持・削除・例外」で分けて確認する方法と、導入前の確認票【2026年10月版】

許可ツール台帳に「Claude API:学習されない」「Gemini API(有料):学習されない」と書いて終わりにしていませんか。学習・保存・人の確認・削除は別の話です。2026年10月26日時点の公式資料をもとに、提供経路・課金・学習・保持・削除・例外の6つの軸でClaude APIとGemini APIを整理し、そのまま使える確認票と台帳の記入例をつけました。

文・ニコ

社内で「このAIツール、使っていいよ」のリストを作るとき、こんな行を書いていませんか?

Claude API:学習されない Gemini API(有料):学習されない

間違いではありません。でも、この1行だけでは台帳としてほぼ何も決まっていないんです。

学習されないことと、保存されないこと。保存されないことと、人が見ないこと。人が見ないことと、消せること。全部、別々の話です。

この記事では2026年10月26日時点の公式資料を読み直して、Claude APIとGemini APIのデータの扱いを6つの軸に分けました。

  1. 提供経路(どの入口から使っているか)
  2. 課金(どの契約・どの課金状態か)
  3. 学習(モデルの改善に使われるか)
  4. 保持(どこに、いつまで残るか)
  5. 削除(どうやって、どこまで消えたと言えるか)
  6. 例外(その条件が当てはまらなくなる場合)

最後に、コピーして使える確認票もつけています。

先に結論

  • 「APIなら学習されない」は条件の半分です。 商用のClaude APIと有料条件のGemini APIには、モデルの学習・製品改善に使わないという説明があります。でも、安全監視や機能のための保存は、それとは別にあるんです。
  • ブランド名ではなく提供経路を先に決めます。 ClaudeはAnthropic直営のAPI、AWS上のClaude Platform、Amazon Bedrock、Google Cloud上の2種類で、データを処理する会社が違います。
  • Geminiの「有料」は請求額でも、チャットの有料プランでもなく、「呼び出すProjectに有効な課金アカウントがあるか」で決まります。 さらに、招待制のContributor Tierなど、有料でも学習に使われる例外があります。
  • 2026年10月26日以降に作ったGeminiの新規Projectでは、Generate Content APIのログ保存が最初からオンです。 古いProjectは従来の設定のままです。
  • ファイルの寿命はデータ全体の寿命ではありません。 Geminiの元ファイルは48時間で消えますが、File Searchに取り込んだ索引は手動で消すまで残ります。
  • ClaudeのZDR(ゼロデータ保持)はモデルと機能の組み合わせで決まります。 ZDR対象外の機能を呼んでも、APIは止めてくれません。その場合は、その機能の保持ルールが適用されるんです。
  • 台帳は「ツール名1行」ではなく、経路・契約・設定・モデル・機能・保存物・削除・例外・証拠・確認日まで書きます。 これは公式の決まりではなく、この記事からの提案です。

誰向けの記事?

AIエージェントを社内に導入する担当者、情シス、法務・セキュリティの担当者、そして自分でAPIを組み込むエンジニア向けです。

非エンジニアの人は、「学習」「保存」「削除」は別の話、という点だけ持ち帰ってください。確認票はエンジニアさんと一緒に埋めると進めやすいですよ。

扱わないことも書いておきます。

  • 個別の案件が法的に適合しているかの判断(個人情報保護法の「提供」「委託」の分類など)
  • ClaudeアプリやGeminiアプリなど、API以外の利用面
  • 各社の料金やモデルの優劣(キャッシュの料金は別の記事で書きました)

この記事では各社の公式資料を読んで、データの扱いを整理しています。実際のAPIにデータを送る実験はしていません。 契約書や管理画面も見ていません。そのぶん、「公式にこう書いてある」と「この記事の提案」は分けて書いています。

台帳の1行が足りない理由:データは6か所に残りうる

1回のリクエストで、データが残る場所は1か所とは限りません。

1回のリクエストで、データが残りうる6つの場所を示した図

入力と出力の本文だけではなく、Filesの保存物、検索の索引、キャッシュ、実行環境、会話の状態、自分で渡したfeedback、自社側のログまで、台帳の対象になります。

読み違えやすい言葉も先に表にしておきます。

表現その言葉だけでは決まらないこと
学習に使わない保存期間、人の確認、外部ツールへの送信、保管場所
ZDR(ゼロデータ保持)一時メモリを一切使わないこと、利用メタデータの扱い、法令・安全上の例外
48時間で削除元ファイルの期限のこと。索引、回答、ログ、バックアップは別
ログをオフ今後の開発者ログの設定。過去のログ、共有データ、安全監視は別
有料利用料金の列と、契約上の「有料サービス」の定義は別
リージョン指定推論・保存・前処理・外部検索のすべてをその地域に限定する保証とは別

軸1:提供経路。まず「どの入口か」を決める

同じ「Claude」でも、入口によってデータを処理する会社が変わります。

提供経路処理する会社・契約ここに注意
Claude API(api.anthropic.com)Anthropic商用の利用規約・DPA(データ処理契約)、ZDRは別途の取り決め
Claude Platform on AWSAnthropicAWS上で使えても、Bedrockではありません。保持の方針は直営APIと同じ
Claude Models on Google Cloud(Anthropic managed)Anthropic直営APIと同じ保持の方針
Claude in Microsoft FoundryAnthropic直営APIと同じ資料が対象。デプロイ構成を特定して確認
Amazon Bedrock上のClaudeAWSAWSの保持設定とモデル条件で決まる
Google Cloud上のClaude(Google managed)GoogleAnthropic直営のZDRをそのまま当てはめない
Gemini Developer APIGoogle追加規約で、課金・地域・共有の条件で分岐する
Google AI StudioGoogleGemini APIと同じ規約だが、「有料」の定義は別
Google CloudのGemini APIGoogleCloud契約で、独自のZDR・ログ・キャッシュ設定がある
SaaSやAPIゲートウェイ経由それぞれの会社中継ログ、再送キュー、会話DBが別に残る

Anthropicの資料によると、Claude API、Claude Platform on AWS、Microsoft Foundry、Google Cloud(Anthropic managed)では、Anthropicがデータ処理者です。一方、Amazon BedrockとGoogle Cloud(Google managed)では、クラウド提供者がデータ処理者だと説明されています。

そして、地味に大事なのが表の最後の行です。SaaSやゲートウェイを挟むと、あなたの会社とモデル提供者の間で、もう一社がデータを処理することになります。SDKが互換だからといって、契約まで同じにはなりません。

Google Cloudの検索連携(Grounding with Google Search)の保持にも、資料間の食い違いがあります。検索結果に残る古い資料には30日とありますが、今回直接開いた現行のCloud資料は、利用者と紐づかない派生クエリ等を最長3日としています。一方、Gemini Developer APIの現行資料では、プロンプト・文脈・出力の保持は30日とされています。CloudとDeveloper APIの数字は、統一して書かないでください。

最初に集める4つの証拠

  • 発注書・利用契約の、サービス名と契約相手
  • エージェントの設定にある接続先URL(APIキー自体は貼らない)
  • APIキーが属する、Organization/Workspace/Cloud Projectの識別子
  • 有効なモデルIDと、有効な追加機能の一覧

モデル本人に「あなたはどのAPI?」と聞きたくなりますが、その答えは接続経路の証拠にはなりません。

軸2:課金。「有料」を何で判定するか

Claude APIでは、商用の利用規約が適用されるAPI入出力は、既定でモデルの学習に使われないと整理できます。課金の条件で学習の扱いが変わるGeminiと比べて、ここは単純です。

では、Geminiはどうでしょう? こちらはややこしいんです。

Gemini APIの「有料」を確かめる5つの順番の図

2026年3月23日発効のGemini API追加規約では、条件は次のように分かれます。

利用条件学習・改善の扱い確認すること
日本などで、無料(Unpaid)として利用入出力が製品・サービスの提供・改善・開発に使われる。人が確認することもある規約は、機密・個人情報を送らないよう求めている
active billing account付きのCloud Project経由でGemini APIを利用有料(Paid)の条件。入出力を製品改善に使わない呼び出すそのProjectの課金状態。別Projectの課金では代わりにならない
無料のAI Studioを使い、利用アカウントがactive billing account付きProjectにアクセスできる規約上、有料サービスとして扱うAPIは「呼び出すProject」、AI Studioは「利用アカウント」で見る。混同しない
EEA・スイス・英国の利用者無料でも、有料のデータ利用条件が適用される地域例外日本の組織には自動で適用されない
Google AI Pro/Ultraなどのチャット購読だけそれだけでは、APIの有料条件を満たす根拠にならないAPIで使うProjectの課金を確認
無料トライアル・クレジット金額0円だけでは判定できない課金ガイドで、有効な有料利用として扱われるか確認
Contributor Tier(招待制のプライベートプレビュー)対象モデルのデータが、無料サービスの条件で改善・開発に使われる料金表の有料列にも「製品改善に使う:Yes」と出る。通常の有料とは別の行に書く
ログをGoogleと共有するdataset、feedback共有したデータは製品の改善・開発に使われる。人の確認もありうるdataset作成時の共有選択を確認

読み取りのコツは料金表の列を見るだけで終わらせないことです。実行するProject、課金の状態、地域、Contributor、共有の選択まで見ます。

ちなみに、後から課金を有効にすれば、過去に無料条件で送った情報まで遡って無かったことになるのでしょうか? そうした保証は今回読んだ資料からは確認できませんでした。

軸3:学習。「使わない」の範囲を分ける

ここまでの話を、学習の観点に絞ってまとめます。

Claude(商用API)

  • Commercial Termsの条項で、サービス由来のCustomer Contentでモデルを学習しない
  • Privacy Centerも、商用製品の入出力は既定で学習しないと説明
  • ただし、feedbackや不具合報告など、自分から渡した内容は別

Gemini(有料のDeveloper API)

  • 有料条件のプロンプトと応答は、製品改善・開発に使わない(ログのページの説明)
  • ただし、Contributor Tierとdataset共有は、有料でも別

Googleの安全監視の資料は、監視用データを方針の執行に使い、方針執行専用のモデルを除いて、他のAI/MLモデルの学習・調整には使わないと説明しています。つまり、「学習しない」と言っても、安全のための専用モデルは例外として書かれているんです。台帳に「学習なし」と丸めて書くと、ここが消えます。

軸4:保持。数字を同じ列に並べない

保持は一番混ざりやすいところです。

Claudeの保持

  • 通常の商用保持: Anthropicの商用のプライバシー資料は、API入出力を受領・生成から通常30日以内にバックエンドから削除すると説明しています。
  • 機能ごとの保持: 機能ページが別の期限を書いている場合は、そちらが優先されます。
  • ZDR: 応答を返した後、プロンプトと回答を保存しない取り決め。営業への申請が必要で、Organizationごとに有効化されます。別のOrganizationには自動で広がりません。Claude ConsoleのPlaygroundは対象外です。

ここで、資料による表現の違いが1つ出てきます。現行のAPI資料には「会話の本文は既定では保持されない」という趣旨の説明があります。ところが、商用のプライバシー資料での説明は30日以内です。どちらかを削らず、両方を台帳に書いてください。 厳密に「保存なし」が必要な案件では、対象のOrganization・Workspace・モデルについて提供者に書面で確認します。

Covered Models:モデルで保持条件が変わる

2026年10月26日時点で、Claude Fable 5/5.1、Claude Mythos 5/5.1は「Covered Models」です。30日の保持が前提で、ZDRは、Anthropicが明示的に認めない限り使えません。

面白いことに、この条件を満たさないOrganizationからFable 5を呼ぶと、Claude APIは次のメッセージで拒否するんです。

{
  "type": "error",
  "error": {
    "type": "invalid_request_error",
    "message": "In order to access this model, your organization or workspace must have data retention enabled."
  }
}

ZDRのOrganizationでも、Workspace単位で30日保持を有効にして、Covered Modelsを使えるようにできます。他のWorkspaceはZDRのままです。ただし、Default Workspaceは常にOrganization全体の設定に従います。

つまり、モデルを切り替えるだけで、保持の条件が変わりえます。 モデルの自動更新やフォールバックを使うなら、候補のモデルをすべて点検の対象にしてください。これは、この記事の提案です。

Geminiの保持は3層

層目的代表的な期間
安全監視ログ規約違反の検知、法令対応プロンプト・文脈・出力を55日。承認されたGoogle社員のみ人の確認が可能
開発者が見るログ・会話状態デバッグ、履歴、会話の継続既定55日。有料は7/14/28/55日に変更できる
保存機能ファイル参照、検索、再開、バッチ48時間、TTL指定、6週間、手動削除まで、など機能次第

安全監視は開発者ログのstore=falseとは別です。ログをオフにしても、安全監視の保持は残りえます。

10月26日の変更

2026年10月26日以降に作成したProjectでは、Generate Content APIのログ保存が既定で有効になります。それ以前のProjectは従来の設定を維持します。

台帳には次を書いてください。

  • Projectの作成日(APIキーの発行日ではありません)
  • Generate Content APIとInteractions APIそれぞれの、Projectの設定
  • リクエスト単位のstoreの指定(Projectの設定より優先される)
  • SDKの版(公式ガイドに最低版の記載があります。更新のたびに照合してください)
  • 既存のログ、dataset、export済みのコピーの有無

同じ列に入れてはいけない数字

数字何の期限かよくある誤読
Claude 通常30日以内商用のAPI入出力の通常の削除全機能の上限が30日
Covered Modelsの30日モデル固有の保持の要件通常の30日と同じ上限
Claude Batch 最長29日Batch作成からの入出力・結果処理完了から29日
Claude キャッシュ 5分/1時間使うたびに更新されるキャッシュの寿命最初の送信からその時間で全部消える
Claude スキーマ 24時間構造化出力のスキーマ(最終利用から)入出力の本文が24時間
Gemini Files 48時間元ファイル索引・会話・監視ログも48時間
Gemini Interactions 無料1日/有料55日利用者向けのInteraction保存無料なら安全監視も1日
Gemini ログ設定 7/14/28/55日開発者ログを削除対象にするまでの日数提供者側の全コピーがその日に物理的に消える
Gemini Batch 6週間バッチ結果の保持・ダウンロード入力ファイルや内部記録も同じ期間
Gemini Live 再開トークン2時間/状態24時間再接続の可否/会話状態の保持トークンが失効したら全データ消去

台帳には数字のほかに、何が保存されるか・起点はいつか・最大か最小か・使うと延びるか・消去か利用不可化かを書いてください。

機能別:何を使うと、何が増えるか

使う機能が増えるほど、保存物も増えます。エージェントは機能をたくさん使うので、ここが台帳の中心になります。

Claude

「ZDR対象」はZDRのOrganizationで対象のモデルを使う場合の話です。

機能・データ保持期限・削除ZDR
Messages、Token Counting(本文を直接送る)通常の保持方針、またはZDRの取り決め通常は自動削除対象
プロンプトキャッシュ本文ではなくKV表現とハッシュをメモリに保持既定5分、拡張で1時間。使うと更新される対象
構造化出力・strict tool useスキーマを最終利用から最長24時間キャッシュ技術的なキャッシュの失効本文と別に確認
Files API明示的に削除するか、設定した期限までexpires_in_secondsは1時間〜90日。未設定は期限なし。削除APIあり対象外
Message Batches作成から最長29日、入出力を保存処理後にBatch削除。実行中は先にcancel対象外
Code executionコンテナ・実行物・投入ファイル・出力は最長30日コンテナの期限とFilesの削除は別対象外
Agent Skills(API)定義・実行データは標準の保持方針バージョン・アップロード資源の削除方法も確認対象外
MCP connector定義・実行結果は標準の保持方針API側とMCP提供者側の削除は別対象外
Claude Managed Agentsセッション記録は、削除するまで残るsession deleteで記録・events・sandboxを削除対象外

Files APIでは、期限が切れたあともメタデータは最長30日読めると説明されています。Managed Agentsは、memory store、vault、skill、environmentなどが独立した資源で、session deleteでは消えません。

そして、ZDR対象外の機能を呼んでも、ZDRのOrganizationではAPIは止めてくれません。 ここが重要です。 Anthropicの資料は、対象外の機能を使うと、そのデータには機能ごとの保持ルールが適用されると説明しています。「ZDR組織だから、システムが防いでくれる」と想定しないでください。許可する機能の一覧を別に決める必要があります。

なお、HIPAA readiness(医療情報向けの取り決め)を有効にしたOrganizationは別です。こちらは、対象外の機能を含むリクエストを原則400エラーで拒否します。ただし、公式のfeature eligibility tableのDetailsで非blockとされるclient-side toolsは例外です。受け付けられてもHIPAA readinessの対象にはなりません。APIの拒否だけを完全な利用制御とせず、実際に使う機能の表とBAAを確認してください。

Gemini(Developer API)

機能・保存物既定の保持削除・設定注意
Generate Content等の開発者ログ2026-10-26以降の新規Projectは保存オン。既定55日Projectの設定、リクエストのstoreが優先非対応の入力・モデルもある。画面にないから保存ゼロ、ではない
Interactions APIstore=trueが既定。有料55日、無料1日store=false、期間変更、IDで削除store=falseはbackground実行やprevious_interaction_idと両立しない
AI Studioのdatasetログの期限を越えて保持。固定の期限なしdataset側で管理・削除Googleとの共有は別の条件。export先も対象
Files API元ファイルは48時間files.deleteで早期に削除48時間は元ファイルだけ
File Search取り込んだデータは手動削除まで。embeddingにTTLなしdocument/storeを個別に削除元ファイルが消えても、索引は残る
明示的なcontext cacheTTL未指定なら1時間ttl、expire_time、cache delete保存量と時間に課金
暗黙的なcontext cacheProject単位で隔離されたRAM、24時間TTLという説明明示cacheの削除方法は当てはまらないGoogleは「ZDRに反しない」と説明
Batch API結果は6週間ダウンロード可、その後永久削除batch delete、関連ファイルも別に確認処理時間48時間とは別の数字
Live APIのsession resumption会話状態を最長24時間SessionResumptionConfigを使わない再開トークン2時間とは別
Grounding with Google Searchプロンプト・文脈・出力を30日機能を使うかぎり、保存をオフにできない無料枠があっても追加条件を読む
Grounding with Google Mapsプロンプト・文脈・出力を30日機能利用時の保持を確認自社の回答履歴の保存期間とは別
Managed agentsのremote environmentidle15分でsnapshotして停止、offlineは最終アクティブから7日environments APIで明示的に削除プレビュー。interaction記録・環境・出力を別資源として点検

Googleの資料では、store=falseの扱いもおもしろいところです。Developer APIのZDRのページ自体が、保証されたZDRが必要なら、Cloud側の提供面(Vertex AI)を使うよう案内しています。store=falseにしても、Grounding(30日・オフ不可)、File API、明示cache、安全監視は残るからです。

では、Cloudに移れば全部ZDRになるのでしょうか? そういう話でもありません。現行のCloudの資料にも、Advanced AIモデルの追加監視、リクエスト・レスポンスのログ、Interactions、Liveの再開などの分岐があります。移る場合も、どの機能を無効にして、どの例外に合意が要るかをCloudの契約として確認してください。

軸5:削除。「消えた」の3段階

削除の証拠は、3段階に分けて書くのがおすすめです。これは、この記事の提案です。

  1. 受付: deleteが成功を返した、管理画面で操作が完了した
  2. 利用不可: 一覧から消えた、IDを取得・再利用しようとすると失敗する
  3. 内部消去: 提供者の内部コピーまで消えた(契約・削除ポリシー・提供者の回答で確認)

APIの404は2までの証拠です。バックアップや安全監視のコピーまで消えたとは言えません。ClaudeのFilesは、削除後も進行中の処理には残る場合があると説明されています。Geminiのログは、一定期間後に削除対象とする、という書き方なんです。

削除するときは、最初に消す対象と、一緒に確認する対象を分けて見ていきます。次の表は確認漏れを防ぐための提案です。

使ったもの最初に消すもの一緒に確認するもの
Claude Filesfile ID進行中のMessages、Code execution、生成されたFiles、出力先
Claude Batchbatch ID入出力、ダウンロード済みの結果、自社ログ
Claude Managed Agentssession IDmemory store、vault、skill、environment、agent、外部から投入したFiles
Gemini Files→File Search元のfile ID、store/documentchunk・embedding、検索の応答、log、dataset、export
Gemini Interactionsinteraction ID関連ターン、Files、cache、environment、dataset
Gemini Batchbatch name入力ファイル、出力ファイル、結果、自社のダウンロード
MCP・外部SaaS当該サービスの記録モデル提供者の記録と、自社の実行基盤のトレース

関連する資源がすべて同時に消えるとは、公式資料は保証していません。 表の右の列は台帳の管理対象を漏らさないためのチェックリストです。

軸6:例外。条件が当てはまらなくなるところ

ここまで見てきた条件が当てはまらなくなる場合をまとめます。

例外公開資料で確認した条件台帳での扱い
Claude:自動安全システムが違反とflagした内容入出力は最長2年、分類スコアは最長7年と説明通常の保持と別の欄。2年は全リクエストの既定ではない
Claude:法令・利用方針の執行ZDRなどでも保持する場合がある例外ありと明記
Claude:feedback・不具合報告関連データを5年保持。学習等に使う可能性本番の社内資料をそのまま送る運用がないか点検
Claude:Compliance APIAPI通常保持とは別の保持モデル。Activity Feedは6年保持監査用のデータとして別の記録にする
Gemini:安全監視55日。人の確認がありうるstore=falseとは別の欄
Gemini:Contributor Tier・dataset共有有料でも、学習・改善に使われる通常の有料とは別の行
Gemini:Grounding30日。オフにできない機能を許可するなら、30日の保持を許容できるか確認
両社:DPAの条件再処理者、越境移転、返却・削除、法令例外を別に定める適用されるDPAの版を記録

学習不使用の一文だけで、DPAの確認が終わるわけではありません。適用されるDPAの版、再処理者の通知、終了時の削除と例外も、あわせて記録します。

導入前の確認票

ここからは、そのまま使える確認票です。この記事独自の確認票案で、提供者の認証票でも、法的な適合証明でもありません。 状態は「証拠あり/要確認/対象外」の3つ。要確認の項目を空欄や「たぶんなし」にしないでください。

A. 対象と契約

項目記入欄証拠・確認者
台帳ID・業務名・利用部門
利用目的と、AIに任せる範囲
送る資料の種類・情報分類・出力に含まれうる情報
製品・API・提供経路・接続先URL
契約相手・注文書・基本契約・追加規約の版
適用されるDPAと個別合意・有効期間
Organization/Workspace/Cloud Project ID
実行キーの所属先(秘密の値は記録しない)
モデルID、preview/GA、フォールバック・自動更新の候補

B. 課金とデータ利用

項目記入欄証拠・確認者
API課金のProjectとactive billingの状態
料金区分とデータ条件(無償機能・無料枠・試用を含む)
AI Studio利用者のアカウント区分・有料に該当する根拠
地域例外を適用する/しない根拠
通常の入力・出力の、学習/製品改善への利用
Contributor Tier・データ提供割引への参加
feedback・dataset共有・サポート提供の設定と権限者
安全監視の保持・人のアクセス・方針執行モデルへの利用

C. 保存物を1行ずつ

保存物・機能作成条件・保存場所保存内容期限と起点削除方法・権限者例外・未確認証拠・確認日
通常のAPI入出力
安全監視
開発者ログ
会話状態・session
原ファイル・生成ファイル
chunk・embedding・索引
cache・スキーマ
Batch結果
sandbox・メモリ・Skills
feedback・dataset・export
自社ログ・第三者サービス

D. 設定・削除・変更

項目記入欄証拠・確認者
ZDRの対象Organization・Workspace・モデル・機能
ZDR対象外の機能を使わない設定・許可機能の一覧
GeminiのProject作成日と、各APIのログ設定
実リクエストのstore、SDK版、background利用
推論・保存・前処理・外部検索の地域
再処理者の確認先と、変更通知の受信者
期限のない資源の、削除予定日・担当・自動化
削除対象IDの対応表と、終了・退職・解約時の処理
削除が、受付/利用不可/内部消去のどこまで確認できるか
許可する情報・用途・機能と、除外するもの
未解決事項、提供者の回答、例外の承認、再確認日

終了条件の案: 実際に使う経路と保存物のすべてに、条件・責任者・証拠が書かれていること。そして、必要な保持・削除の条件との不一致が解消されているか、限定条件として明記されていること。欄が埋まっただけで、個別案件の適法性や安全性を承認したことにはなりません。

台帳の記入例(架空の構成)

どちらも架空の構成例です。「このサービスなら承認」という意味ではなく、条件を1行にまとめる練習として読んでください。

例1:Claudeで社内文書を要約。保存機能は使わない

台帳項目記入例
経路Claude API(直営)、商用Organization org-example、業務専用Workspace
用途社内資料から、承認済みの範囲を抜き出して要約
モデル実装時の正確なモデルIDを記入。Covered Modelsに該当しないことを確認
契約Commercial Terms・DPAの版、対象OrganizationのZDRの書面と有効日
学習通常の商用入出力は学習に使われない。feedbackに資料を貼る運用は、この用途に含めない
機能Messagesに直接入力。Files、Batch、Code execution、Managed Agents、MCP connectorは使わない
例外安全のflag・法令、モデル変更、機能追加のときは再確認
残る確認設定と実リクエストの一致、実データの分類、第三者連携の有無

書いてはいけない省略:「Claude API:保存なし」。 どの組織の、どのモデル・機能の、何のデータかが消えてしまいます。

例2:Geminiの通常の有料APIで、ファイルを要約

台帳項目記入例
経路Gemini Developer API、project-example、active billingを確認
課金条件通常の有料。Contributor参加なし。AI Studioの契約や別Projectの請求は根拠にしない
学習通常の有料の入出力は改善に使わない。datasetのGoogle共有なし
ログProject作成日とログ設定、SDK版、store=falseが実際に送られていることを確認
ファイルFiles API。処理が終わったらdelete。元ファイルの48時間も記入
別の保持安全監視55日(storeとは別)。自社ログの期限も記入
追加の条件File Search、Grounding、Live再開、Managed Agentの環境を使うなら、別の条件を足す
残る確認自社の要件が、安全監視の保持を許容するか。内部消去・法令例外について、必要なら書面で確認

書いてはいけない省略:「有料Gemini:学習されず、ファイルは48時間で全部消える」。 監視・ログ・索引の区別が消えます。

機密資料を送る前にできる動作確認(提案)

契約の確認と、実装の確認は別です。次の手順はこの記事の提案で、私が実行したものではありません。機密や個人情報を含まない人工のデータで試してください。

  1. 構成を固定する。Project/Workspace、モデルID、API、機能、SDK版、ログ設定、共有設定を記録
  2. 人工資料に、識別用の文字列を入れる(例:SYNTHETIC-EXAMPLE-001)。顧客名や本物のメールは使わない
  3. 機能を1つずつ試す。通常リクエスト、Files、File Search、Interactionsを一度に有効にせず、作られたIDを一覧にする
  4. 保存物を観察する。管理画面・list/get APIで、本文、履歴、元ファイル、索引、出力のどれが存在するかを見る
  5. 設定の効果を確認する。Geminiのstore=falseが開発者の保存を抑えるか、履歴の継続やbackgroundへの影響も見る。安全監視の不存在を、試験で証明しようとしない
  6. 削除を資源ごとに試す。元ファイルだけを消したとき、索引やInteractionから情報にアクセスできるかも見る
  7. 利用不可を確認する。get・list・再利用の結果を保存する。404を、全内部コピーの消去とは記録しない
  8. エージェントの停止と削除を分ける。archive、cancel、環境の停止、権限の失効、キーの削除で、保存物がどうなるかを見る
  9. 結果を確認票に戻す。公式の説明と違う点は、再確認事項として残す

ひとつ注意。Geminiのログ画面は、Projectにactive API keyがないと、ログが見えなくなることがあります。キーを削除して画面から見えなくなっても、ログを削除した証拠にはなりません。

提供者・代理店への質問票

SaaSや代理店を挟むなら、API提供者と、間に入る会社のそれぞれに、管理している範囲を分けて答えてもらいましょう。

対象:[契約名・契約番号]、[Organization/Workspace/Cloud Project]、[モデルID]、[API・機能の一覧]

  1. この構成に適用される契約、追加規約、DPA、個別のデータ保持合意の版と、優先関係を教えてください。
  2. 入力・回答・システム指示・添付・ツール結果を、モデル学習、製品改善、安全対策モデル、評価、人の確認のどれに使いますか。任意に提供する場合の条件も分けてください。
  3. 通常の入出力、安全監視、開発者ログ、会話状態、ファイル、索引、cache、sandbox、feedbackごとに、保持期間・起点・保存場所を教えてください。
  4. 選択している無料枠・試用・割引・Contributor・dataset共有は、データ利用の条件を変えますか。
  5. ZDRの対象モデル・機能・組織はどれですか。対象外の呼び出しは、拒否されますか、別の保持で処理されますか。
  6. モデルの自動更新やフォールバックで、保持・人の確認の条件が変わることはありますか。
  7. delete、TTL、archive、cancel、キー削除、解約の違いを教えてください。関連資源、バックアップ、安全監視、法令上の保全の扱いと、内部消去の確認方法も教えてください。
  8. 推論、保存、前処理、外部検索、サポートを、どの地域・処理者・再処理者が担当しますか。
  9. 設定変更・再処理者の変更・規約の改定・モデル条件の変更は、誰に、どの方法で通知されますか。
  10. 当社の構成について、公開ページと異なる個別の条件がある場合は、適用対象と期間を明記した書面をください。

避けたい書き方

次の書き方では、対象と条件が抜け落ちてしまいます。なので、台帳には書かないほうがいいですね。

  • 「APIなら学習されない」
  • 「有料なら、例外なく学習されない」
  • 「Claudeは必ず30日で消える」
  • 「Geminiはファイルが48時間だから、全データが48時間」
  • 「ZDRなら、人が絶対に見ない」
  • 「ログをオフにしたから、過去も全部消えた」
  • 「Cloudなら全機能ZDR」

この記事で確認できていないこと

  • 利用企業の署名済み契約、ZDRの承認状況、個別の移行条件
  • 実際のCloud Billing、AI Studio、Claude Consoleの設定と権限
  • 本番のエージェントが実際に送っている本文・ファイル・MCPの結果
  • API delete後のバックアップ、安全監視、法令上の保全の、内部での消去
  • tuning(調整)に渡したデータの、現行の全モデル・全経路での扱い

この記事の数字は2026年10月26日時点の公式資料の本文を読んだ結果です。特にGeminiのログの仕様は調査当日に更新されていました。使う前に、実際の契約と管理画面で再確認してください。

参考にした公式資料(すべて2026年10月26日に参照)

Anthropic

Google(Gemini API)

クラウド経由