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1Password for Agentsは「専用保管庫を共有する」しくみ? 新方式・保管庫+トークン方式・既存のClaude連携の違いを公式資料で整理する

「Grok Bot用の保管庫を作って、パスワードを共有する」のは、新しい1Password for Agentsではなく従来のプラグインの話です。新方式は保管庫を共有せず、ログイン1件ごとに自分のアプリで承認します。1Passwordの開発者資料、公式FAQ、Claude連携のセキュリティ説明で、3つの方式の渡すもの・承認の単位・期間・切断のしかたを整理しました(2026年10月23日時点)。

文・ニコ

2026年10月22日に1Passwordが「1Password for Agents」を発表した直後、Xでこんな投稿が並びました。

  • 「Grok Botやdots用のVaultを作って、自分のVaultからパスワードを共有して使う」
  • 「保管庫を共有しない。ボットがログインするたびに、自分の1Passwordアプリで承認する」

どっちもそれっぽいですよね。でも、言っていることは真逆です。いったい、どっち?

前者は従来のGrok Botプラグインの説明で、後者が新しい1Password for Agentsの方向です。ただし後者にも、細かいところで公式資料と合わない点があります。

混ざりやすい3つの方式を、公式資料を手がかりに見分けていきます。

  • 従来のGrok Botプラグイン(専用保管庫+トークン)
  • 新しい1Password for Agents
  • 既存の1Password for Claude(Mac向け)

「パスワードを見せないと、そもそも何が守られるのか」という大きな話は、前の記事(AIエージェントにパスワードを見せずにログインを任せると、何が守られ、何が残る?)にまとめました。今回は3つの方式の違いだけに絞ります。

先に結論

従来のGrok Botプラグイン、新しい1Password for Agents、既存のClaude連携(Mac)の3つについて、渡すもの・承認・つなぎ方を比べた図
  • 「専用保管庫を作って共有する」のは、従来のGrok Botプラグインのやり方です。
  • 新方式は保管庫もトークンも渡しません。エージェント側は「このサイトのログインを使わせて」と頼む権利だけを持ち、許可は自分の1Passwordアプリでしか作れません。
  • 既存のClaude連携はさらに別物です。同じMacの中で1Passwordアプリが仲介する作りになっています。

名前は似ていても、仕組みは3つ別々です。

Xの2つの投稿は、どこが合っていた?

投稿言っていること公式資料との照合
@MLBear2専用Vaultを作り、自分のVaultからパスを共有して使う従来のGrok Botプラグインの流れと一致。新方式の設定手順ではない
@sora_biz従来は専用の保管庫とトークン。新方式は保管庫を共有せず、ログインのたびに承認「保管庫を共有しない」は合っている。「ログインのたび」は、後で見るように正確ではない

投稿者の意図や、そのとき使っていた版までは分かりません。ここで確かめたのは、公式資料との食い違いだけです。

方式1:従来のGrok Botプラグイン(専用保管庫+トークン)

なぜ「専用の保管庫」が要るの?

ここがいちばん大事なところです。専用保管庫は好みで作るものではありません。作らないと、つなげないからです。

この方式は、1Passwordの「サービスアカウント」を使う仕組みです。人ではなく、プログラムが1Passwordにアクセスするためのアカウントですね。1Passwordの開発者向け資料には、こう書かれています。

  • サービスアカウントには「トークン」があり、これで認証する。
  • 見せる保管庫と、保管庫ごとの権限(読み取りなど)を選ぶ。
  • 自分のPersonal・Private・Employee保管庫と、既定のShared保管庫は、サービスアカウントに渡せない。
  • 権限と保管庫は、作ったあとに変えられない。変えたいなら、新しく作り直す。
  • トークンは作成時に1回しか表示されない。パスワードと同じように扱う。

出典:Get started with 1Password Service Accounts、Service Account security

つまり、いつも使っている保管庫はそのまま渡せません。だから「Shared with Grok Bot」のような専用の保管庫を作って、渡したいログインだけをそこへ移すことになります。

つなぎ方は2通り

Cursorの公式フォーラムで、サポート側がGrok Botの1Password連携について答えています。

  1. アプリにおまかせ。 1Passwordの一時的なCLIセッションで、「Shared with Grok Bot」保管庫と、その保管庫だけを読めるサービスアカウントを作る。Grok Botが保持するのは、そのサービスアカウントのトークンだけ。
  2. 自分で作る。 保管庫とサービスアカウントを自分で作り、Grok Botの「Use a service account token instead」にトークン(ops_で始まる)を貼る。

2つ目はMacがなくても使える方法として案内されていました。1つの保管庫につき1つのサービスアカウントで接続し、最大10保管庫まで使える、という回答もあります。

出典:1Password vault-only access in GrokBot(2026年10月20日の回答)、1Password integration now limited to one vault per service account?(10月21日)、1Password Connector(9月19日)

これは公式ドキュメントではなく、フォーラムでのサポート回答です。仕様は変わることがあります。

何が分かっていて、何が分からない?

分かっているのは次のことです。

  • トークンを持つ側は、あなたがいなくてもその保管庫の項目を読める。サービスアカウントのトークンには、保管庫を開く鍵の材料が入っているためです。
  • だから、守る範囲の決め手は保管庫に何を入れるか。入れなかったログインは見えません。
  • 報道とサポート回答は、「入力のたびに自分の端末で承認する」と説明しています。

一方、まだ分からないこともあります。

  • 入力のとき、パスワードがどの経路を通るのか。モデルに見えるのか。公式資料で、その実装は説明されていませんでした。
  • 承認の詳しい仕様(頻度、有効期間)も、公式資料では確認できませんでした。

「保管庫+トークン」と「モデルにパスワードが見える」は、同じ意味ではありません。逆に「見えない」と断言できる材料も、ここにはありません。

方式2:新しい1Password for Agents

こちらの仕組みは1Passwordのパートナー向け開発者資料(「Agentic Autofill」の統合ガイド)で詳しく説明されています。読むときに気をつけたい点は2つあります。

  • この資料は「Partner preview」。一般提供前のもので、仕様が変わるかもしれません。
  • 消費者向けの発表やFAQも、同じ「Agentic Autofill」という名前で、同じ流れ(要求→承認→入力)を説明しています。だから同じものを指していると考えられます。ただし、各連携先(MuseやGrok Botなど)の実装がこの資料と完全に同じかは、確かめていません。

流れ:頼む権利と、許可は別

新方式の4ステップ。接続は1回、要求は作業ごと、承認は自分のアプリ、入力は拡張機能
  1. 接続(最初の1回)。 製品の「Connect 1Password」から、1PasswordのWebでサインインして同意します。連携先は「頼む権利」を受け取ります。この時点では何も読めません。
  2. 要求(作業ごと)。 エージェントが目的と最大5件のログイン(サイトと理由)を添えて要求します。
  3. 承認(自分のアプリ)。 自分の1Passwordアプリに、誰が何のために頼んでいるかが出ます。使うログインを選んで許可します。
  4. 入力。 ブラウザー拡張機能が入力して送信します。値は連携先のコードにもモデルにも渡りません。

出典:Build with 1Password Agentic Autofill

保管庫は共有しない

開発者資料の対応範囲を見ると、対象は「その人自身の保管庫」です(Individualなら個人用、Familyならプライベート)。共有保管庫はまだ対応していません。

さらに、保管庫を共有しても承認の手間はなくならない、とも書かれています。承認とは、その人のアプリが1件のログインの鍵を連携先に渡す手続きだからです。

出典:FAQ

つまり、専用保管庫を作る手順は新方式では要りません。

承認は「毎回」ではなく、ログイン1件ごとに1回

先ほどの「ログインのたび」が公式資料と食い違うのは、この点です。開発者資料にはこう書かれています。

  • 承認はログイン1件ごとに1回。入力1回ごとではない。
  • 承認後はそのログインを必要なだけ入力できる。複数ページのサインインも続けられる。
  • 発表時点の有効期間は30日。期間を設定できるようにするのは今後の予定。
  • 承認はチャットセッションに結びつかない。
  • 入力は本人が席にいなくても動くので、予約や定期の作業も有効期間の中なら続けられる。

出典:Get the user's approval、FAQ

「毎回自分のアプリで承認する」というイメージは、少なくとも開発者資料とは違います。

一方、消費者向けのFAQは「承認を求める頻度は連携によって変わる」と書いています。「30日」はパートナー向け資料に書かれた、発表時点の値です。Muse・Grok Botなど個々の製品の設定として確認したものではありません。使う製品の画面と説明で確かめてください。

秘密はどこで復号される?

開発者資料の説明では、承認されたログインは1Passwordの認証済みエンクレーブ(AWS Nitro Enclaves)の中で復号されます。拡張機能が1Passwordの資格情報仲介サービスとの暗号化通信で受け取り、ページに入力する流れです。

連携先に渡るのは、パスワードではなく「参照」(ポインター)です。入力が成功すると、ページに入れた値は消えます。

ただし資料は書き方にも注意を求めています。「連携先のプラットフォームとモデルは値を扱わない」とは言えても、「資格情報がエージェントの環境に絶対届かない」とは言えない。入力の瞬間、値はブラウザーのページにあるからです。

1Passwordが保証すること/連携先が守ること

領域1Passwordが保証連携先が守る
許可の作成本人のアプリだけ。連携先のトークンや鍵からは作れない―
保管庫の暗号化項目はエンドツーエンド暗号化のまま―
トークンの権限要求の作成、状態の確認、許可されたログインの取得だけ。項目の一覧や承認はできない―
入力中のページ返る前に値を消すその間、モデルがページを読めないようにする
常設アクセス―承認は「どのログインか」を絞るだけで、使う頻度は絞らない。トークンと鍵を1つの秘密として守る
複数のエージェント―1人の全エージェントが同じトークンと鍵を共有する。分離は連携先がやる

出典:Security model

まだできないこと(開発者資料の発表時点)

  • Businessアカウント、共有保管庫(予定あり)。
  • パスキー、ソーシャルサインイン(予定あり)。
  • ログイン1件だけの取り消し。取り消しは接続全体で、取り消すと許可したログインはすべて使えなくなる。
  • 1Passwordの中からの取り消し。切断は連携先の製品から行う。

消費者向けの発表は「いつでも接続を解除できる」と案内しています。その操作は連携先の製品に用意されるようです。開発者資料でも、そう設計することを連携先に求めています。

使える地域について、開発者資料は当面「米国のIndividual / Familyアカウント」としています。一方、発表には「1Password.comの個人・家族」とあり、.euと.caは未対応と書かれています。表現が違うので、使う製品の条件を確認してください。

方式3:既存の1Password for Claude(Mac向け)

こちらは前の2つとは別の設計です。1Passwordのサポート資料に、かなり細かい説明があります。

  • Mac、1Password for Mac 8.12.28以降、ブラウザー拡張、有料のClaudeプラン、ClaudeデスクトップとClaude in Chromeが必要。
  • 通信はMacの中で完結する。秘密の値は1Passwordやパートナーのサーバーを通らない。
  • 常設の承認はない。新しいエージェントのセッションごとに、新しい承認画面が出る。
  • 許可はそのセッションだけ。暗号化したキャッシュはタスク完了・ブラウザー終了・最長9時間のどれかで消える。

出典:Use 1Password to sign in to websites with Claude、About the security of 1Password for Claude

承認の長さが新方式(30日、セッションをまたぐ)とはかなり違います。

そして、発表にある「Anthropic Claude Duet」は「coming soon」です。この既存のMac向けClaude連携の説明を、新方式のClaude Duetにそのまま当てはめることはできません。

3つを並べて比べる

従来のGrok Botプラグイン新しい1Password for Agents既存のClaude連携(Mac)
渡すもの専用保管庫を読むサービスアカウントのトークン「頼む権利」(OAuth)。保管庫もトークンも渡さないなし(Mac内の1Passwordアプリが仲介)
保管庫専用保管庫が必須(個人用は渡せない)自分の保管庫のまま。共有保管庫は未対応自分の保管庫のまま
承認入力ごと(サポート回答)ログイン1件ごとに1回、30日(開発者資料)セッションごとに毎回
承認する場所自分の端末自分の1PasswordアプリMac上の1Passwordアプリ
復号される場所公式資料に説明なし1Passwordのエンクレーブ→拡張機能Mac上(1Passwordアプリと拡張機能)
切断トークンの取り消し・削除(自分の1Passwordで)連携先の製品から。接続全体1Passwordのサポート資料に切断手順あり
根拠の質開発者資料+フォーラムのサポート回答開発者資料(preview)サポート資料

自分が使っているのは、どれ?

見分ける手がかりは、つなぐときの画面にあります。

  • 「Shared with Grok Bot」のような保管庫を作る、またはops_で始まるトークンを貼る → 従来方式。
  • 「Connect 1Password」でWebに移ってサインインし、同意する。そのあと、自分の1Passwordアプリに「誰が何のために頼んでいるか」の承認画面が出る → 新方式。
  • ClaudeデスクトップのConnectorsから接続し、Touch IDで承認する → 既存のClaude連携。

同じ「1Password」という名前の連携でも、画面が違えば仕組みも違います。

方式ごとの、ひとつ上の使い方

従来方式を使うなら

  • 専用保管庫にはそのエージェントに必要なログインだけを入れる。
  • トークンは読み取り専用で作る。作ったあとは権限を変えられないので、変えたいときは作り直す。
  • やめるときは、1Password側でサービスアカウントとトークンを取り消す。つなぎ直しの失敗で残った「Grok Bot agents」などのサービスアカウントも、整理する。
  • ログイン先のサービスで専用アカウントを使うと、サイトの中の権限も狭められる。

新方式を使うなら

  • 要求の中身(サイトと理由)を読んで、必要なログインだけ許可する。
  • 承認は30日続く(開発者資料)。作業が終わったら、切断も考える。
  • 切断するときは、連携先の製品の画面で操作する。ログイン1件だけの取り消しは今のところできない。

どの方式でも

  • 「パスワードが見えない」ことと、「ログイン後に何をしてもいい」ことは別です。サイトの中で何をさせるかは、別に決めてください。
  • ログインの後に、エージェントがサイトの中で何をするかは、各製品の安全機能次第です。1Passwordの保証は資格情報の保管・承認・受け渡し・入力までです(Claude連携のサポート資料にも明記されています)。

まとめ

  • 「専用保管庫を共有する」のは従来のGrok Botプラグイン。サービスアカウントは個人用保管庫を渡せないので、専用保管庫が必要になる。
  • 新しい1Password for Agentsは、保管庫もトークンも渡さない。許可は自分のアプリでしか作れず、承認はログイン1件ごと。開発者資料では有効期間が30日で、「入力のたびに承認」ではない。
  • 既存のClaude連携(Mac)は、セッションごとに毎回承認し、キャッシュは最長9時間。別の設計。
  • 見分けるには、つなぐ画面を見る。

新方式はまだ順次配布の途中で、開発者資料も「Partner preview」です。使い始める前に、そのエージェントの公式ページと手元の画面を見てください。

調べたこと・調べていないこと

2026年10月23日に、次の原典の本文を取得して確認しました。

  • 1Passwordの発表記事、個人向け連携のFAQ、MuseとGrok Botのパートナーページ
  • 1Passwordの開発者資料(Agentic Autofillのパートナー向けガイド、サービスアカウントの資料)
  • 1Password for Claudeのサポート資料とセキュリティ説明
  • Grok Botのドキュメント、Cursor公式フォーラムのGrok Bot関連の投稿(サポート側の回答)
  • Xの2投稿(本文を取得)

やっていないことも書いておきます。

  • 実際のアカウントでの接続や実験はしていません。画面の流れは資料の記述にもとづいています。
  • 従来のGrok Botプラグインで、入力時の値の経路や承認の仕様を、公式資料で確認できていません。サポート回答と報道が根拠の部分は、そう書きました。
  • 新方式の消費者向け製品(MuseやGrok Botなど)の設定が、開発者資料と同じかは未確認です。承認の有効期間「30日」は開発者資料の値です。
  • 開発者資料はpreviewで、仕様が変わる可能性があります。
  • 独立した第三者による監査の結果は確認していません。